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エンジニアを目指す浪人のブログ

情報系に役立ちそうな応用数理をゆるめにメモします

有限次元ベクトル空間上の線形作用素を表現する行列を構成する

数学 線形代数 関数解析

線形代数関数解析を勉強していて,線形写像(linear mapping)あるいは線形作用素(linear operator)と行列(matrix)の関係がいつもよく理解できずにモヤモヤして終わってしまうので,線形作用素を表現する行列の構成についてメモしておくことにしました.

問題を設定するため,過去記事2.6-1 Definition (Linear operator). を用います.

本記事の目的に進みます.有限次元ベクトル空間における線形作用素を表現する行列を構成します.Kreyszig(1989)のsection2.9を参考にして書きます.
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{\displaystyle X }{\displaystyle Y } を同じ体を持つ有限次元ベクトル空間とし,{\displaystyle T:X \to Y } を線形作用素とします.{\displaystyle X } の基底 {\displaystyle E = \{ e_1,\cdots,e_n \} }{\displaystyle Y } の基底 {\displaystyle B= \{ b_1,\cdots,b_r \} } を選びます(次元 {\displaystyle n,r } は固定されているとします). この設定において,あらゆる {\displaystyle x \in X }

(1) {\displaystyle x = \xi_1 e_1 + \cdots + \xi_n e_n }

によりただ一通りに表現できます.{\displaystyle T } は線形作用素なので,{\displaystyle x } の像は

(2) {\displaystyle y = Tx = T \left( \sum_{k=1}^n \xi_k e_k \right) = \sum_{k=1}^n \xi_k T e_k }

です.(1)はある {\displaystyle x \in X } についてただ一通りの表現なので,一つ目の結果を得ます:
基底 {\displaystyle \{ e_1,\cdots, e_n \} } の像 {\displaystyle \{ T e_1,T e_2, \cdots ,T e_n \} } が規定されるならば,{\displaystyle T } が決定される(あらゆる {\displaystyle x } について,ただ一通りの {\displaystyle y=Tx } が決定される)ことになる.

先に進みます.{\displaystyle y, \ T e_1,\cdots, T e_n \in Y } なので,ただ一通りの表現

(3.a) {\displaystyle y= \sum_{j=1}^r \eta_j b_j }
(3.b) {\displaystyle T e_k = \sum_{j=1}^r \tau_{jk} b_j }
(3.b') {\displaystyle \begin{bmatrix} T e_1 \\ T e_2 \\ \vdots \\ T e_n \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} \tau_{11} & \tau_{21} & \cdots & \tau_{r1} \\ \tau_{12} & \tau_{22} & \cdots & \tau_{r2} \\ \cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\ \cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\ \tau_{1n} & \tau_{2n} & \cdots & \tau_{rn} \end{bmatrix} \begin{bmatrix} b_1 \\ b_2 \\ \vdots \\ b_r \end{bmatrix} = (T_{EB})^{\sf T} \begin{bmatrix} b_1 \\ b_2 \\ \vdots \\ b_r \end{bmatrix} }

が存在します((3.b)または(3.b')は {\displaystyle \{ T e_1,T e_2, \cdots ,T e_n \} }{\displaystyle T_{EB}=(\tau_{jk})} と基底 {\displaystyle B } により規定されることを意味しています.また {\displaystyle T_{EB}=(\tau_{jk})} は,線形作用素 {\displaystyle T } と基底 {\displaystyle E,B } から決定されていることがわかります).これらを(2)に代入すると以下を得ます.

{\displaystyle y = \sum_{j=1}^r \eta_j b_j = \sum_{k=1}^n \xi_k T e_k = \sum_{k=1}^n \xi_k \sum_{j=1}^r \tau_{jk} b_j = \sum_{j=1}^r \left( \sum_{k=1}^n \tau_{jk}\xi_k \right) b_j }

{\displaystyle \{ b_1, \cdots, b_r \} } は線形独立なので,左辺と右辺の {\displaystyle b_j } の係数は等しくなければなりません.すなわち

(4) {\displaystyle \eta_i = \sum_{k=1}^n \tau_{jk} \xi_k, \;\;\;\;\;\; j =1,\cdots,r }

です.これにより二つ目の結果を得ます:
{\displaystyle x = \sum_{k=1}^n \xi_k e_k } の像は(4)から得られ,{\displaystyle y= Tx=\sum_{j=1}^r \eta_j b_j = \sum_{j=1}^r \left( \sum_{k=1}^n \tau_{jk}\xi_k \right) b_j } である.なお,(4)を行列で表現すると以下となり,{\displaystyle T_{EB}:\mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^r} であることが容易にみてとれます.

(4') {\displaystyle \begin{bmatrix} \eta_1 \\ \eta_2 \\ \vdots \\ \eta_r \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} \tau_{11} & \tau_{12} & \cdots & \cdots & \tau_{1n} \\ \tau_{21} & \tau_{22} & \cdots & \cdots & \tau_{2n} \\ \cdots & \cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\ \tau_{r1} & \tau_{r2} & \cdots & \cdots & \tau_{rn} \end{bmatrix} \begin{bmatrix} \xi_1 \\ \xi_2 \\ \vdots \\ \vdots \\ \xi_n \end{bmatrix} = T_{EB} \begin{bmatrix} \xi_1 \\ \xi_2 \\ \vdots \\ \vdots \\ \xi_n \end{bmatrix} }

ここまでの議論から,線形作用素 {\displaystyle T:X \to Y}{\displaystyle X } の基底 {\displaystyle E = \{ e_1,\cdots, e_n \}}{\displaystyle Y } の基底 {\displaystyle B = \{ b_1,\cdots,b_r \} } が与えられると,ただ一通りの行列 {\displaystyle T_{EB}:\mathbb{R}^n \to \mathbb{R}^r} を決定できることがわかります(この行列を表現行列と呼ぶ流派?もあるようです).これが線形作用素を表現する行列であり,目的は達成されました.
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なお上記の議論とは逆に,任意の{\displaystyle r }{\displaystyle n } 列行列は(有界)線形作用素(と {\displaystyle X } の基底と {\displaystyle Y } の基底)を表現する行列であることは(4')を考えることにより簡単に得られます.

以上,有限次元ベクトル空間上の線形作用素を表現する行列を構成しました.


参考文献
[1] Kreyszig, E. (1989), Introductory Functional Analysis with Applications, Wiley.