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エンジニアを目指す浪人のブログ

情報系に役立ちそうな応用数理をゆるめにメモします

エルミート行列の相異なる固有値に対する固有ベクトルは直交することの証明をメモする

応用上よく用いられると思われる,線形代数における以下の事実について証明を調べたのでメモすることにしました.証明では,エルミート行列のすべての固有値は実数である,というよく知られている事実を用います(過去記事を参照してください).{\displaystyle \langle \cdot,\cdot \rangle } はユニタリ空間における通常の内積です.

事実.
エルミート行列 {\displaystyle A  \ (= A^* = (\bar{A})^T ) } の相異なる固有値に対する固有ベクトルは直交する.

 

証明.

{\displaystyle A } のある相異なる固有値{\displaystyle \lambda_1, \lambda_2, \ \lambda_1 \neq \lambda_2 },それらに対する固有ベクトル{\displaystyle x_1,x_2 } とする.{\displaystyle \lambda_1, \lambda_2 } は実数である.また,{\displaystyle A^* } (随伴作用素)の定義と {\displaystyle A = A^* } より

{\displaystyle \langle x_1, A x_2 \rangle = \langle A^* x_1, x_2 \rangle = \langle A x_1, x_2 \rangle }

である.この最左辺について,{\displaystyle \lambda_2 } は実数であることも用いて

{\displaystyle \langle x_1, A x_2 \rangle = \langle x_1, \lambda_2 x_2 \rangle = \bar{\lambda_2} \langle x_1, x_2 \rangle = \lambda_2 \langle x_1, x_2 \rangle }

である.一方,最右辺について

{\displaystyle \langle A x_1, x_2 \rangle = \langle \lambda_1 x_1, x_2 \rangle = \lambda_1 \langle x_1, x_2 \rangle }

である.したがって,{\displaystyle ( \lambda_1- \lambda_2) \langle x_1, x_2 \rangle } でなければならない.{\displaystyle \lambda_1 \neq \lambda_2 } より {\displaystyle \langle x_1, x_2 \rangle = 0 } であるので {\displaystyle x_1 }{\displaystyle x_2 } は直交する.固有値 {\displaystyle \lambda_1,\lambda_2, \ \lambda_1 \neq \lambda_2 } は任意にとれるので,事実は示せた.(証明終わり)

 

 以上,ほぼ引用しただけですが,エルミート行列の相異なる固有値に対する固有ベクトルは直交することの証明を調べました.なお,上記の証明と文献[1]では内積の定義が異なります.物理における内積は数学におけるそれとは複素共役の取り方が逆になるようです(文献[1] 8.1.2 内積 (注意2) を参照してください).本記事では数学の慣習を用いています.


参考文献
[1] 山形大学 遠藤龍介先生のノート http://kscalar.kj.yamagata-u.ac.jp/~endo/kougi/quantum/QuantumAch8.pdf
[2] Wikipedia 随伴作用素のページ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%8F%E4%BC%B4%E4%BD%9C%E7%94%A8%E7%B4%A0