シリンダー集合について考える
確率解析(連続確率過程)を勉強していると序盤の設定のところでシリンダー集合(柱状集合)が突然現れ,離散確率過程とのギャップにモヤモヤすることがあったので,シリンダー集合について調べることにしました. 上の連続関数の集合
を考え,距離
を導入します.すると
は完備可分な距離空間となります.
シリンダー集合(cylinder set / cylindrical subset)とは以下のような形の集合のことです.
すなわち, の要素の中で,(有限個の)各時点における値が実数上のボレル集合体
の要素となる関数の集合を意味しています.じつはこのシリンダー集合により生成される
-加法族は,
上のボレル集合体
なのです(参考記事)!その証明を以下に示します.
証明. となるような写像(natural projection)
を導入する.以下の形の集合からなる集合族
を考える(先ほどのシリンダー集合です).
はじめに を示す.
ならば
は
上の開集合であるので
である.
の要素はそのような集合の有限加算共通部分であるので,
である.よって
を得る.
つぎに を示す.
の可分性と過去記事の補題1.1より,
上の任意の開球が
の要素であることを示せばよい.
上の任意の開球
は以下で表される.
このように表現できる理由を以下に示す.全ての について
となるような
が存在するならば,
の連続性と
の稠密性より
すなわち
が成り立つ.逆に,
が成り立つならば,すなわち
となるような
が存在するならば,全ての
について
が成り立つ.
したがって, は
の要素の加算共通部分の加算和で表されるので
を得る.(証明終わり)
以上,シリンダー集合について考えてみました.シリンダー集合の定義と存在意義がすこし明らかになってきたと思います.
参考文献
[1] Kuo, H.H. (2006), Introduction to Stochastic Integration, Springer.
[2] Mathematics Stack Exchange http://math.stackexchange.com/questions/1236489/generating-the-borel-sigma-algebra-on-c0-1