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情報系に役立ちそうな応用数理をゆるめにメモします

線形写像が単射であるための必要十分条件は核(カーネル)が零ベクトルであることの証明をメモする

勉強を進めていて,線形写像の核(カーネル)と単射との関係について重要に感じたので,その証明を調べてメモすることにしました.


問題を設定するため,線形写像の定義は文献[2]を,核(カーネル)の定義は文献[3]を用います.
単射の定義を示します.文献[4]にあります.

定義.
以下(のどちらか)が成り立つとき,関数 {\displaystyle f: X \to Y }単射であるという.

{\displaystyle \forall x,x' \in X \; [ x \neq x' \Rightarrow f(x) \neq f(x') ] }
{\displaystyle \forall x,x' \in X \; [ f(x) = f(x') \Rightarrow x=x' ] }


以上の設定のもとで,本記事の目的に進みます.文献[1]をベースにしてまとめます.

事実.
線形写像単射であるための必要十分条件は核(カーネル)が零ベクトル {\displaystyle \{ 0 \} } であることである.

 

証明.

線形写像 {\displaystyle T:X \to Y }単射であるとする.任意の {\displaystyle v \in ker(T) = \{ x \in X : T(x)=0 \} } について以下が成り立つので,{\displaystyle v =0 } である.

{\displaystyle \;\;\; T(v)=0 \;\;\;\;\;\;\;\;\;\; \because \; v \in ker(T) }
{\displaystyle \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; = 0 T(v) }
{\displaystyle \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; =T(0) \;\;\;\;\; \because \; } 線形写像の定義

逆に,{\displaystyle ker(T) = \{ 0 \} } であるとする.{\displaystyle T(x)=T(x') } のとき,

{\displaystyle \;\;\; 0 = T(x)-T(x') \;\;\;\;\;\;\; \because \; } 線形写像の定義
{\displaystyle \;\;\;\;\;\; = T(x-x') \;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\;\; \because \; } 線形写像の定義

が成り立つので {\displaystyle x-x' \in ker(T) } である. {\displaystyle ker(T) = \{ 0 \} } より {\displaystyle x-x' =0 } よって {\displaystyle x=x' } であり,{\displaystyle T }単射である. (証明終わり) 

 

以上,ほぼ引用しただけですが,線形写像単射であるための必要十分条件は核(カーネル)が零ベクトルであることの証明を調べました.

 

参考文献
[1] Georgia Institute of Technology Larry Rolen先生のノート
http://people.math.gatech.edu/~lrolen3/LinearAlgebraNotes18.pdf
[2] Wikipedia Linear mapのページ
https://en.wikipedia.org/wiki/Linear_map
[3] Wikipedia Kernel(algebra)のページ
https://en.wikipedia.org/wiki/Kernel_(algebra)
[4] Wikipedia Bijection, injection and surjectionのページ
https://en.wikipedia.org/wiki/Bijection,_injection_and_surjection