測度論や関数解析の勉強をしていると,ノルムの極限が ノルム(L無限大ノルム)であることを証明なしで用いている場合を目にします.そこでモヤモヤすることがあったので,その証明を調べることにしました.
問題を設定するため,以下の定義をしておきます.Rudin(1987) Definition 3.6とDefinition 3.7を参考にしています.
定義.
測度空間 を考える.
とし, を複素数値可測関数, を可測関数とする.
を定義する. を の -ノルムという.また, を満たす全ての からなる集合を とする.
を定義する.これを の本質的上限という.
を定義する. を の -ノルムという.また, を満たす全ての からなる集合を とする.
以上の設定のもとで,本記事の目的に進みます.以下の命題と証明は,Stein and Shakarchi(2011) Proposition 2.2をほぼ引用したものです (和訳し,証明には説明を追加しています.また, と の二つの記号が混在していますが,同じ意味で使用しています).
命題 2.2
とし,この は が有限測度となる集合に台をもつとする.このとき,すべての について であり,以下が成り立つ.
証明.
を可測集合とし, とする.仮定より である. ならば, 上で であり証明の必要はない. ならば,
したがって, を得る.また を得る.
次に,任意の に対してある が存在し
が成り立つ.したがって
を得る.よって
であり, は任意にとれるので を得る.
以上より,
であることが示せた.(証明終わり)
以上,ノルムの極限が ノルムであることを証明しました.
参考文献
[1] Rudin, W. (1987), Real and Complex Analysis (Third Edition), McGraw-Hill Book Company.
[2] Stein, E., and Shakarchi, R. (2011), Functional Analysis: Introduction to Further Topics in Analysis, Princeton University Press.